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2011年11月21日

アマチュア乗り物ビルダーの生きる道:EVはアマチュアのためにこそある!?

[ 投稿者 : fratdrive ブログ : [ f ]原動機Blog カテゴリー : 自作の乗り物 ]


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Originally uploaded by frunderbird
先日の休みの日、秘密基地に行ってました。

筑波サーキットのとなりにあるATG・オートルックツクバガレージの貸しガレージに、250ccの自作バギーや、広島の師匠からいただいた50ccの手作りゼロハンカーが格納してあります。ガレージの奥にはオーバルダートコースがあって、時々走らせてもらっています。
久しぶりにゼロハンカーを走らせようと思っていて、まずは去年ヤフオクで買った別のCB50エンジンに換装する作業をすすめているところです。

そしたら、「これ、自作なんですか?」と、いくつか向こうのガレージの方から声をかけられて、いろいろと世間話をしました。その方は学生フォーミュラの製作指導をしていたことがあるということで、どこかの学校の先生のようでした。いろいろと話をさせていただいたのですが、いちばん印象に残ったのは、「学生フォーミュラの衰退」についてです。

ぼくらの自作バギーも学生フォーミュラも、素人が乗り物を作っているという点では同じなのですが、学生フォーミュラの場合、卒業したOBが就職先の自動車メーカーとかからプロのノウハウを持ってきちゃうんだそうです。まあ、レベルアップにはなりますよね、間違いなく。でも結局、学生フォーミュラと言いながら、ほとんどプロが作ったに等しい、モンスターみたいなマシンが出来上がっちゃったと。
その方は「衰退」という表現を使っていたと思いますし、話を伺った僕も、それは衰退だと感じました。

ゼロハンカーの大会も似たような経緯をたどりました(ちょっと違いますけど)。もともとは町おこしのイベントとして始まって、最初はほんとに普通のお父さんが自宅の軒先で作ったような素朴なマシンとか、6輪車とかの奇抜なマシンとかがあって、わいわいガヤガヤと楽しくやっていたようです。実際、最初の頃はスタート直後にタイヤが取れちゃうマシンとかが続出して、完走するのも大変だったと聞きました。でも、レースで勝つのはそういうマシンではない。結局、回を重ねるたびに、板金屋さんとか自動車ディーラーとか、プロの技術や施設を持つチームが生き残っていきます。当然ながら、そういうとこはノウハウを蓄積していき、トラックに何台も積んで会場にやってきます。一方で徒手空拳の「軒先ビルダー」は何もかもが敵わないので、次々に辞めていきます。…そして次第に、一部のマニアックな有志の集まりとなっていきました。ノウハウが蓄積されるほど、多様性は排除され、敷居の高いコンペティションになっていったのです(ちなみに、ゼロハンカーは50ccという非力なエンジンを使っていることから、普通のレーシングマシンとは違ったノウハウが求められます。過去に何回かワークスが参戦したのですが、一台も勝てなかったみたいです)。

※手作りゼロハンカーについては僕が以前つくったコチラのサイトをご覧ください。
(ところで今はどうなっているんでしょうか?)

さて、ちょうどぼくがATGガレージに行ってた日、筑波サーキットで第17回 日本EVフェスティバル 2011が行われていたので、ちょっとのぞいてみました。


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Originally uploaded by frunderbird
そこで僕がいちばん興味を持った*1のは、「何でもEV展示」というコーナーに置かれていた、「エネループde5万円EV」というものです。オフィシャルプログラムにはこう書かれています。
エネループde5万円EV 後藤聡(栃木県)
カテゴリー:電動カート
ベース車:オリジナル
モーター:DCブラシレス/バッテリー:エネループ
「単3電池で動くEV」に再び挑戦です。制作費5万円の手作りカートを、40本のエネループで走らせます!
そして展示パネル(←画像参照)にはこう書かれています。
『5万円電気自動車』が単三電池で走ります
2007年の本フェスティバルで話題を集めた単三電池で走る電気自動車“eneloop 9.6V”と、そのバージョンアップ版として2008年に登場した“5万円電気自動車”は、2009年には“世界最小(?)ハイブリッドEV”の名を冠してさらなる進化を遂げ、念願のパフォーマンス賞に輝きました。
今年は原点に帰り、単三電池で走ることに再び挑戦します。高効率モーターの使用やツインキャパシタの採用など、単三電池のみで走るための改良がいろいろ。もちろん部品はすべて市販品で制作費は5万円。『だれにでも作れるEV』のコンセプトは今年も健在です。

駆動システム(車体後方部分)
・大容量と内部抵抗の低減を低コストで両立させた(?)ツインキャパシタ
・電動機には高効率・高出力のラジコンバギー用ブラシレスモーターを使用(ラジコン用モーター&コントローラー)

単三型エネループ40本で構成されるバッテリーユニット 普通のアルカリ単三電池では動きません

全長1450mm × 全幅735mm × 全高540mm、軸距1190mm、重量12.0kg
主電池(電圧、容量) 三洋電機製 eneloop(1.2V、2000mAh)、配列 10本直列4組並列(総電圧12.0V、総容量8Ah)
電動機(定格出力) enRoute社製センサーレスDCブラシレスモーター Alfa-2500 (600W)
制御装置 enRoute社製ブラシレスコントローラー enESC-A6、制動機構 制御装置による電気(回生)制動
最高速度 26km/h(計算値)、航続距離 9000m(カートコースでの計測値)
モーターはコレですね。1/8バギー用です。ラジコンのモーターで人が乗って走れるのだという点にまずびっくりしました。そしてとにかく超軽くてシンプルな車体にもググッときました。残念ながら僕がイベントをのぞいた時には、作者の後藤聡さんにはお会いできなかったのですが…。
このマシンのすごいのは、ニッケル水素のエネループだけではなく、キャパシターを組み合わせて減速回生も可能としているところ。これで最高速度29km/h、航続距離9kmも走るというのです。減速回生へのキャパシター利用は、世界の自動車メーカーでもこれからという最先端のアイデア。それを個人でやっちゃったというのは驚くしかありません。
- ハイブリッドが5万円! ただし電池とキャパシターのEV。
…ってことなのだそうです。

これを見て、そしてさっきの「学生フォーミュラの衰退」の話を聞いて、僕はこう考えました。

学生フォーミュラやゼロハンカーのように、乗り物を自作するには大きな「壁」があります。それは、エンジン駆動ゆえの宿命ではないかと思います。
エンジンはハイパワーです。速く走れます。そのかわりに重いです。エンジン自体の重量もありますし、構造が複雑になってしまうためにトータルでどうしても重くなってしまうということもあります。重くて速い車体を支えるために、フレームの剛性を確保することも必要になります。
結局のところ、ド素人がおいそれと手を出せない代物なんです。設計の知識、溶接などの設備、スペース、費用…いろいろなものが必要になります。…これは、やったことのある人であれば、うなずいてくれることだと思います。

対してEV、電気モーター駆動の乗り物はどうでしょう。モーターはエンジンほど重くないし(←多分)、エンジン車に比べて構造も単純で済みます。スピードをそんなに出さなくてもいいのであれば、剛性もさほど求められません。
ざっくり言ってしまうと、パッテリー、モーター、コントローラー、そしてタイヤさえあれば、それなりに走る乗り物が作れてしまうんじゃないでしょうか。
また逆にいえば、エンジンに比べて非力なEVは、できるだけシンプルに軽く作るべきだとも思います。

コンバートEVってのがあります。ガソリン車をEVに改造したものです。そーゆーキットもEVフェスティバルでは展示してました。以前は、愛車スタリオンをEV化しても面白いかなとか思ってましたけど、最近それは違うんじゃないかって気がしています。EVでガソリン車とおんなじことしたって、意味ないんじゃないかと。ガソリン車みたいなゴッツい車体なんかEVには要らないし、ゴッツい車体を走らせるためにはゴッツいモーター(+その他もろもろ)を搭載する必要が出てきます。そりゃ、プロはね、プロの腕を使ってEVを作るでしょう。でも、EV(の本質)って、そういうものじゃないんじゃないかと。

プロが作らなくても、ちゃんとしてなくてもそこそこ走る。それがEVなんじゃないかと。

たとえば、言論やジャーナリズム、メディアの世界は長らくプロが支配してました。でも今や、インターネットが登場し、ブログが登場し、ツイッターやフェイスブックが登場し、プロの独断場ではすでになくなっています。むしろ、誰でも簡単に情報発信できるようになって、これまで(プロが言論を独占していた時代には)なかった視点とか、発想とか、どんどん出てくるようになった。…っていうような「パラダイムシフト」をもたらすのがEVなんじゃないかと思うわけです。

これまで、「そんなんじゃ走らないよ」とか「剛性的に問題なんじゃね?」的に軽くあしらわれ、一蹴されてきたモノが許容されるようになるんじゃないかと。ド素人の発想で、これまでなかった乗り物がどんどん出てくる、そんな「アマチュアの時代」の扉が開いたのではないかと。「プロ」が作らないものを自由に発想し、形にし、作るという乗り物の新しい遊びができる時代が到来したんじゃないかと。これからは、そういう新しい遊び、乗り物との付き合い方が広がり、市民権を得ていくのではないかと。それこそがEVなんじゃないかと思うわけです。

僕も今年の夏ごろから、ものすごくミニマムな、乗り物っていうかなんつーか、一応それでも乗り物って範疇になるのかなあ…的な「次世代移動ツール」のアイデアを温めています。
人は100Wで生きられる』ってのは最近出た本のタイトルですけど、最小限の移動エネルギーで動く乗り物を作りたいと思っています。
念頭にあるのは、エアロトレインの小濱康昭教授がおっしゃっていた、
人一人が移動するために必要なエネルギーを、人間が出せるパワーである300Wを基本に考えようというのです。1馬力が750Wだから、人は0.4馬力になりますね。2頭立ての馬車相当のパワーつまり2馬力=1.5kwを移動手段の基本としても成立するのではないかと。エネルギーの浪費はやめて、身の丈に合った暮らしをしましょうと。
[ link ]
という考え方です。

ただし、ガソリンエンジンを否定する気はさらさらありません。クルマもバイクも、いじるのも走らせるのも好きです。これまで通りゼロハンカーや自作バギーでも遊びますし、老後にレストアを楽しむために(?)ポンコツバイクも大事にとってあります。
だけど、「どこに行くにもクルマ」的なあり方は変だと思ってます。適材適所、乗り物のバリエーションはもっと増やすべきだと思ってますし、乗り物はもっと「フリー」でいいと思ってます。

僕のアイデア、いずれそのうち、形にして世に出したいと思っています。

(ここんとこ忙しくて、これを書き上げるまでにずいぶんと日が経ってしまいました。でも筑波に行ったこの日、僕はとっても上機嫌でガレージをあとにし、いつもの百観音温泉経由で帰路につきました。自分の向かう方向がはっきり見えた、そう感じた有意義な一日でした)

*1 より正確には、「唯一興味を持った」でしょうか。

⇒この記事をふくむカテゴリー [ 自作の乗り物 ] もどうぞ。
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